気付かなければ 幸せだったのに

今、こんなにも忙しい中自分が頑張って働いていられるのは、イツかI店に帰れるってヤクソクがあるから。
ソレはスグに溶けて無くなってしまう甘い甘い砂糖菓子のようなヤクソク。
でも、私の中ではそのヤクソクが全て。
そのヤクソクが生きる意味。
生きる理由。
でも。
もし。
もしも。
もう二度とI店に帰れなくなってしまったら、どうなるだろう。
考えた事も無かった。
考えたくも無かった。
じゃあ、私は何の為に働くのだろう。
終わり無く忙しく週休二日もままならず残業三昧で。
何の為に。
誰の為に。
イツかI店に帰れる日が来たら、スグサマ特別休暇使って4連休取ってやるンだ。
そしたら多分、その特休を消化して店に戻った黒兎に、皆は「今まで黒兎さんがK店行って皆大変だったのに、やっと戻ってきた矢先にそんな長期間休んで何考えてるンだ!」って怒りながら、笑いながら迎え入れてくれる。
こんな容易く想像出来る未来。
だけど容易く手に入らない未来。
どうかお願いです。
奪わないで。
壊さないで。
いつか帰れるというヤクソクさえあれば、ソレがいつになろうと、何年でも、何十年でも、私は頑張れる。
私は生きていられる。
気付かなければ受け入れられるカモしれない。
でも、気付いてしまった。
分かってしまった。
だから、もう、戻れない。
帰れない。
私はこのヤクソクを糧に今まで頑張ってきた。
例えソレが曖昧な言葉だとしても。
証明の無いものだとしても。
ソレを奪うというのなら。
ソレを虚とするというのなら。
私がココにいる意味を奪う事になる。
私がココにいる意味を虚とする事になる。
もう一つの家。
もう一つの家族。
大切な何か。
やっと気付けたモノ。
自分に欠けていたモノ。
溶けて消えて無くなって。
ソレは。
ソレだけは。
許して。
侵さないで。
助けて。
守らせて。
叶えて。


ソレは
とても簡単な願い。
だけど
世界の何よりも
世界の何処よりも
遠いヤクソク。